溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

「……別れた。」

「嘘……!? あのなのちゃん好き好きな庵が別れたって……!?」

 俺の返答に、兄さんはこれでもかと目を見開いている。

 そりゃあそうだ。

 兄さんは俺の菜花に対する溺愛を知っているし、兄さんも菜花に会った事がある。

 兄さんにすら嫉妬しちゃうんだから、別れたという言葉が理解できないんだろう。

 でも、本当の事。

「菜花と定期的に会えなくて菜花に寂しい思いをさせるなら、別れたほうが菜花も幸せだよ。それに、会社を継いだら菜花にめいっぱい会えるんだから、今我慢すればいいだけの話。」

「でもそうしたら、なのちゃんが他の男子と付き合っちゃうかもしれないよ? 会社を継ぐって言っても、あと一年以上かかるんだから。なのちゃんと別れるまでしなくても、良かったんじゃないの?」

 ……確かに、俺も強引な手を使った。

 兄さんの言葉に、下唇を噛み締める。

 菜花に事情を話せばきっと協力してくれる。定期的に会えなくても、菜花は待っててくれる。

 けれど……菜花の心情を考えれば、近くにいるのに定期的に会えない彼氏なんて嫌だろう。