溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

 兄さんは呑気にどら焼きを眺めながら、幸せそうな顔をしている。

 ……相変わらず、兄さんはぼんやりしてるんだから。

 はぁ……と息を吐いて、踵を返して病室から出ようとする。

 今日も勉強が大量にあるから、早めに帰らないと。

「あれ~、庵もう帰っちゃうの? 兄ちゃん悲しいよ~。」

「今日も勉強がある。じゃあね、兄さん。」

 菜花と会えないストレスも相まって、乱暴な言い方になる。

 勉強で時間が取れなかったとはいえ、別れるのはやり過ぎたかもしれない。

 こんなに自分の首を絞めるなんて、考えてなかった。

 毎日忙しいのに、菜花のことだけをいつも考える。

 菜花への好きが倍増していって、抑えきるのももうそろそろ無理になってきた。

 だけど……会社を継ぐまでの辛抱だ。

 それまで菜花が俺のことを想ってくれてるかは分からないけど、できるだけ早く迎えに行きたい。

 俺だけの……菜花だから。

「庵さ~、その様子だとなのちゃんと何かあったの? 庵がイラついてるの久しぶりに見たから、そんなのなのちゃん関連だと分かってるけどね。」