溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

 コンコンとノックをし、病室のドアを開ける。

「兄さん、来たよ。」

「庵、いらっしゃい! 我が弟よ、久しぶりに会えて兄ちゃんは嬉しいなぁ~!」

「はいはい。」

 病室に入るや否や、兄さんのうるさい声が聞こえる。

 黙ってほしいな……なんて、病人には言えないけど。

「ん。これ兄さん好きなやつでしょ?」

「わお、どら焼きたくさんあるねぇ~。庵、ありがとう!」

 無邪気な笑みを浮かべて喜ぶ兄さんを横目に、近くの椅子に座らせてもらう。

 兄さんは見た感じ、そこまで大きな怪我をしていないように見える。

 あ、骨折してる時点で大きな怪我か……まぁ、いいか。

 兄さんは骨折してもピンピンしているし、普通の人よりも回復が早い。

 幼い頃から怪我ばかりしてきた兄さんだからきっと、回復速度も速いんだと思う。

 ……実際のところはどうか、知らないけど。

「というかごめんね、庵。僕が怪我したばっかりに、会社の勉強してもらって。跡継ぎの勉強も今してるって、親父から聞いたよ。」

 兄さん……やっぱり知ってるか。