溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

「えー、相変わらず庵は冷たいこと。」

「何とでも言えばいい。」

 ダル絡みしてくる愁人を適当にあしらい、学校を出る。

 そのまま駅に行って、電車に乗ってある場所に向かう。

 ……マジで、兄さん何やってんだか。

 電車内で揺られながら、ぼーっと考える。

 今俺は、怪我した兄さんのお見舞いに行こうとしている。

 怪我した理由は父さんから聞いた通り自転車で事故を起こしたらしく、盛大に骨折したらしい。

 動くのも精一杯らしく、ドジな兄さんには呆れる他なかった。

 兄さんのせい……って言いたくないけど、兄さんには少しだけ恨みがある。

 故意じゃない事故だとしても、突然跡を継げと言われたのは迷惑極まりない。

 降りれるものなら、とっくに跡継ぎから降りてる。

 父さんは仕事人間だからあんまり好きじゃないし、兄さんとは一緒に住んでないからそもそも会わない。

 ……だけど兄さん、一人暮らしし始めて事故起こしたんだから、馬鹿としか言いようがない。

 つり革を持つ手に若干力を入れながら、電車の中からあまり変わらない景色を見つめていた。