溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

 自分の思考を落ち着かせる為、急いで菜花から離れようとする。

「先輩っ! どうして……何で別れようって、言ったんですか……?」

 ……っ。

 苦しそうな、必死な菜花の声が届く。

 俺の手を弱い力で握ってくる菜花に、不謹慎だけどドキッとする。

 本当……本当にこんな地獄、壊したい。

 これ以上は自分の我慢が利かなくなると分かり、俺は強引に菜花の手を振り払った。

「……ごめん。」

 冷たい声色で言い、足早に菜花から離れる。

 違う。本当はこんな事がしたいわけじゃない。

 菜花を……悲しませたいわけじゃ、ない。

 俺が手を離した途端、菜花はこれでもかと言うほど悲しそうで泣きそうな表情をしていた。

 その表情が……頭から、離れない。



 時間は虚しくも過ぎていき、あっという間に放課後になる。

 部活に行く奴もいれば、帰ろうとしている奴もいる。

 そんな中俺は、ある場所に向かおうと歩を進めていた。

「庵ー、今日カラオケ行かね?実はさ、クーポン券貰っちゃってさー。」

「一人で行け。」