溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

 まぁ……そんなところも香耶ちゃんの可愛くて良いところなんだけどっ。

 微笑ましいなぁと思いながらも、自分の机に着いて準備をする。

 ええっと、今日はこれとこれと……。

 時間割を確認しながら、一つ一つ丁寧に机に入れていく。

「あ、藤乃さんおはよう。」

 そうしていると、近くからそう声をかけられた。

「市ヶ谷君、おはようっ。」

 私も挨拶を笑顔で返し、挨拶をしてくれた彼に視線を向ける。

 彼は市ヶ谷佑樹(いちがやひろき)君で、クラスメイトの中では結構仲が良いほうの男の子。

 実を言うと市ヶ谷君は、入学したての頃に私に話しかけてくれた人なんだ。

 だから今でも市ヶ谷君のことは優しい人だと思っているし、これからも仲良くしてほしいなって思ってる。

 い、市ヶ谷君はどう思ってるか分からないけど……あはは。

「市ヶ谷も結構隅に置けないね~。菜花にはかっこいい彼氏がいるのに、アプローチするなんて。」

「あ、あはは……八千代、そんな事言わないでよ。そういうつもりじゃ……」

「いーや! あたしのセンサーは誤魔化せないんだからっ!」