あー……もう菜花と会えなくなってから、一か月くらい経つのか。

 無意識に舌を打ち、大きなため息をこれでもかと吐く。

「今日も今日とて不機嫌だねぇ。見てるこっちが呆れそう。」

「だったら話しかけてくんな。」

「こわっ。庵、マジで最近ヤバいって。顔怖すぎ、般若かよ。」

 ……うるさい。

 愁人が何やら面白そうにニヤニヤしているけど、気にしないほうが良い。鬱陶しいだけだ。

 仕方ないだろうが。もう一か月も好きな女に会えてないんだ。

 あれから会社の跡継ぎとしての勉強が激化してきて、精神的にも苦痛。

 そんな中好きな子と会う事を禁じられてるって……本当に最悪だ。

 父さんに反抗できる材料も俺にはないし、どうする事もできない。

 やっぱり俺、馬鹿だ。

 馬鹿なのは前々から承知していたが、最近は馬鹿さが顕著になっていると思う。

 はぁ……菜花に、会いたい。



 お昼休憩に入り、何となく教室から出てほつき歩く。

 教室にいると女子に言い寄られるし、どこか静かな場所に行きたかった。