思い切って先輩の手を掴んで、大きな声を上げる。

「先輩っ! どうして……何で別れようって、言ったんですかっ……?」

 私は、それだけが聞きたい。

 それだけ聞けたら、十分なのに……っ。

 思いの外大きな声が出てしまったけど、はっきりさせたかった。

 先輩は驚いたのか、目を見開いて私を見つめている。

 だけど次の瞬間、私の手を振り払った。

「……ごめん。」

 それだけ言い残して、速足で言ってしまった先輩。

 あ……やっちゃっ、た……。

 私、自分のことばっかり考えて……先輩に嫌な思い、させちゃったよね。

 自分の不甲斐なさに今更ながら気付き、きゅっと下唇を噛み締める。

 最低、だ……。

 私はただ、聞きたかっただけ。だけど、先輩に問い詰めるつもりなんてなかった。

 ……でも、大きな声を出し過ぎた。

 きっと先輩も私のこと、今頃面倒だって思ってる。もう一か月近くも経つのに、まだ引きずってるのかって。

 こんな重たい女と別れて清々したって、思ってるかもしれない。