溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

 新しい恋……だけど私は、そんなものに頼らない。

 他の人と付き合うなんて考えられないし、考えたくもない。

 市ヶ谷君には申し訳ない気持ちがあるけど、はっきり言わないと。

「……ごめん、なさい。私は市ヶ谷君とは、付き合えません……。」

 スカートの裾を握りながらも、市ヶ谷君をじっと見つめる。

 震えた声でそう言い、市ヶ谷君から逃れようとする。

 何だか、市ヶ谷君が市ヶ谷君じゃないみたい。

 いつもとは違う彼の雰囲気に圧倒され、いつもよりも弱気になる。

 だけどはっきり断ったから、大丈夫なはず……。

「だけど俺、諦めないから。藤乃さんが、俺を好きになってくれるまで。」

「……どうして、そう言ってくれるの? 私は、市ヶ谷君を絶対好きにならないのに。」

 市ヶ谷君の芯が通っている言葉に、自分の気持ちを返す。

 だって私、市ヶ谷君の告白を断ったんだよ……?

 あんなにはっきりと言ったのに、どうして今も尚そう言うのかが……私には分からない。

 市ヶ谷君の妙に熱っぽい視線を受けながら、静かに返答を待つ。