溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

 まさか、と思って瞬きを繰り返す。

 そんな私に市ヶ谷君は、苦笑したまま私を見つめてきた。

「藤乃さんはモテるんだよ。その事をもっと自覚しなきゃ。」

 え……?

 市ヶ谷君は言葉を言った途端、真剣な瞳を私に向けた。

 そのまま口を開き、言葉を繋げてくる。

「今藤乃さんは誰とも付き合っていない……フリーの状態なんだから、告られるのも当然。篠碕先輩っていう強敵がいなくなったから、みんな藤乃さんにアタックしてるんだよ。」

 ……市ヶ谷君?

 な、何だか……様子が、いつもと違うような……。

 いつもはもっと穏やかな雰囲気を纏っているのに、今は……全然違う。

 “男の人”っていう雰囲気を感じ取り、一歩後ずさる。

 でも、距離を取ろうとしても、市ヶ谷君が近付いてくるから意味がない。

 い、いちがや、くん……?

 壁に背中が当たり、市ヶ谷君との距離が凄く近くなる。

「ねぇ……俺じゃダメ?」

 それと同時に市ヶ谷君の、そんな切なそうな声が耳に届いた。

 俺じゃダメ……って、もしかして、付き合うのが……?