私がそう言うと、彼は諦めたような、全てを分かっているような表情を浮かべた。

「そ、うだよね……。藤乃さんは今でも、篠碕先輩のことが好きなんだよね。」

　何かを悟ったような彼の口調に、小さく頷く。

　そういえば、私と庵先輩が別れたの……噂になってたなぁ。

　噂になるほどでもないと思っているけど、庵先輩は男女問わず人気だから必然的なのかもしれない。

　私が庵先輩のこと、諦められないって事……どうして彼が知っているんだろう。

　噂にはなっていない事を確信をもって言われたから、息が詰まってしまう。

　それでも……彼の言葉に嘘はない。

「本当に、ごめんなさい。」

　いたたまれなくなり、もう一度謝って踵を返す。

　そのままあてもなくどこかへと向かい、彼が見えなくなる位置まで移動した。

　彼には申し訳ないけど、こうでもしないとまた泣きそうだった。

　先輩のこと、最近はマシになってきたと思い込んでいたけど……全然だ。

　割り切ってない、諦めてないから、自分に負けて泣いちゃいそうになる。