溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

 本当に先輩って、凄いや……。

 心の中でそっと思い、昇降口に入って靴を履き替える。

「じゃあ菜花、またお昼にね。」

 あ……もう着いちゃった……。

 もっと一緒にいたかったなぁ……なんて、先輩を困らせるだけだよね。

「は、はいっ。では……」

 学校ではきちんと、メリハリをつけなきゃ。

 寂しいという気持ちを押し殺し、先輩に背を向けようと体を動かす。

 その時、私の気持ちを察したように先輩が頭を撫でてくれた。

「そんな寂しそうな顔しないで。また会えるから、ね?」

「そ、そうですよねっ!」

 キュンと胸が高鳴り、また先輩に好きが募る。

 先輩に会えないのはちょっと寂しいけど、お昼にまた会えるもんねっ……。

 私は先輩に撫でられた頭を一瞬触ってから、先輩と別れて教室へと向かった。



 ガラッと教室の扉を開けて、自分の机に向かおうとする。

 ……だけどその前に、勢いよく誰かに抱き着かれた。

「おはよう菜花~!」

「ふふっ、香耶ちゃんおはようっ。」

 ぎゅーっと強く抱き着いて挨拶してくれたのは、大親友の八千代香耶(やちよかや)ちゃん。