先輩じゃない人といる未来なんて、全く思い浮かばないよ。

　……私はずっと、先輩だけを想っているから。

　そんな気持ちを込めて言うと、香耶ちゃんは困ったように息を吐きだした。

「そっかぁ、菜花のことだからそう言うってのは分かってたけどさ……新しい恋をして失恋の傷を癒すのも良いとは思うよ。あたしの大事な大事な菜花を傷つけたんだから、篠碕先輩はただじゃおかないけどねっ！」

　……やけに新しい恋を推してくるなぁ。

　香耶ちゃんが言わんとしている事は、嫌と言うほど分かる。道理だって通っている。

　だからこそ……信じたくない。

　こんな言葉って言ったら香耶ちゃんに失礼だけど、それだけで気持ちが揺るぐようなら先輩の彼女でいた資格もない。

　先輩がどう思うが、私は先輩一筋だから……。

「まぁでも……」

　私がもう一度、改めて先輩のことを考えていた時。

　香耶ちゃんが小さく呟いて、私の瞳をまっすぐに見つめてきた。

　その瞳は……とても真剣で、香耶ちゃんの本気が伝わってくる。

「菜花の恋だから、あたしは菜花を応援する。篠碕先輩は許せないけど、菜花が幸せになればそれでいいって思うから。あたしでいいならいつでも相談乗るし、篠碕先輩を忘れたいって言うなら合コンでも何でも連れて行って忘れさせてあげる。だから……菜花が思いつめる必要は、全然ないから。」