溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

「? ……はいっ。」

 やっぱり先輩の言う事、分からないなぁ……。

 そう思いながらも大きな声で返事をして、笑みを返す。

 そうすると先輩は満足そうに、笑顔を返してくれた。

 ふふっ、先輩ってよく分からない時もあるけど……やっぱり好き。

 今日も今日とてそう思いながら、私はやっと周りの視線に気付いた。

「ねぇ……篠碕先輩だよっ! 今日もかっこいいよね!」

「うんうん! それにやっぱりいつ見ても、篠碕先輩と藤乃さんってお似合いだよね~。」

「分かる~! 藤乃さんめちゃくちゃ可愛いし、先輩はめっちゃかっこいいしさ……目の保養だよ~。」

 うっ……な、何か言われてるっ。

 きっとみんな、どうして私みたいな奴が先輩と付き合っているのかって思ってるんだ。

 視線が痛いくらいに刺さり、できるだけ気配を消そうと肩を縮こまらせる。

 それに比べて先輩は……何でそんなに堂々としてられるんだろう……?

 先輩は慣れてるように周りの視線を気にしていなくて、こんな時でも尊敬してしまう。

 さ、流石庵先輩……。