「なーのかっ。」

「……っ、香耶ちゃん?」

 スマホをじっと見つめていたら、突然香耶ちゃんに名前を呼ばれた。

 ずっと先輩のことを考えていたから、反応が遅れてしまう。

 ……どうしたんだろう、香耶ちゃん。

 私を呼んだって事は何か用事があるんだと思うけど……何だろう?

「どうしたの?」

 不思議に思いながらも、そう聞いてみる。

 すると香耶ちゃんは、待ってました!と言わんばかりに目を輝かせた。

「実はね……近くに新しい喫茶店ができてさ。そこのケーキ超美味しいらしいから、菜花と一緒に行こうと思って!」

 そう言いながら、ふふっと可愛らしく笑う香耶ちゃん。

 ケーキ、かぁ……。

 喫茶店とケーキという言葉に、思わず反応する。

 ケーキは私の大好きな食べ物トップ5に入るほど好きなもので、「行く!」と返事をしてしまいそうになる。

 でも……私、そんな気分になれない。

 返事をする前に俯いてしまい、香耶ちゃんから目を逸らす。

 せっかく香耶ちゃんが誘ってくれたのに、こんな態度をとるなんて失礼にも程がある。