溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

 そうしたら、死ぬよりも苦痛だ。

 だからそうならないように、別れたって言うのに。

 まぁ……こいつの言う通りかもしれないけど。

 そう言うと愁人は呆れたように、大きく息を吐いた。

「お前らしいっちゃお前らしいけど、まさか菜花ちゃんを手放すなんて俺も思ってなかったわ。お前のことだから、対策はしてるんだろうけど。」

「分かってるならわざわざ言うな。」

 当たり前だ。菜花に他の輩が近づかないよう、通達は出してある。

 ……そんな輩いたら、俺が排除するけど。

 そんな事を思いながら、菜花とのトーク画面を開く。

《別れようって思った理由だけ、教えてください。》

 菜花の最後のメールは、これ。

 本当なら、今すぐに返事をして菜花に全てを説明したい。

 それができない事が……腹立たしい。

 父さんが関わるだけで、俺はこんなにも弱かったんだな。ダサすぎる。

 改めて理解し、落ち着く為に一旦トーク画面を閉じる。

 その時、こう声をかけられた。

「篠碕君、ちょっといいかな……?」