溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

 香耶ちゃんに強引に引っ張られ、近くの空き部屋に連行される。

 中から鍵をかけてから電気をつけ、私を椅子に座らせた。

「思ったよりも腫れが凄いや。結構泣いたでしょ?」

「ま、まぁ……。」

 泣きながら寝たくらいだからね……。

 そんな事は言えるわけもなく、曖昧に言葉を濁す。

 香耶ちゃんは視線を逸らす私を見て、大きくため息を吐いた。

「ねぇ……何があったの? 菜花がこんなに泣くなんて、らしくないよ。」

 ……言え、ない。

 きっと香耶ちゃんは、私がどうして泣いてるのかあらかた見当はついているはず。

 だけど内容までは分からないから、はっきりさせたんだ。

 唇を真一文字に結び、絶対に言わまいという意思表示をする。

 すると香耶ちゃんは、私の手を優しく握ってきた。

「菜花が泣いてるの、あたし見てられない。何となく分かってるけど……菜花の口から教えて。」

 優しい口調でそう言ってくれる香耶ちゃん。

 ここまで真摯に向き合ってくれるなんて……香耶ちゃんはやっぱり、一番の友達だ。