溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

「っ……どうして、ですか?」

 振り絞って出てきた言葉はそれだけで、唇が凄く震えている。

 先輩は私を見つめてから、すぐに踵を返して帰ろうとした。

 そんな先輩を、慌てて引き留める。

 先輩の制服の袖を掴んで、大きな声を上げた。

「私のこと……やっぱり、嫌いになりましたか……?」

 だから別れようって、決めたんですか……?

 弱い力で服の袖をつかむも、先輩は動じる事なく裏庭を出て行ってしまった。

 ま、って……せん、ぱいっ……!

 その瞬間、視界がじわっと滲んでくる。

 それを引き金にしてとめどなく涙が落ちてきて、その場にしゃがみ込んだ。

 やっぱり先輩は、私のこと嫌いなんだ……。

 先輩から直接聞いたわけじゃないけど、きっとそうなんだ。

 私と付き合うのが嫌になったから、別れようって……。

 両手で涙を拭い、小さな声を上げて泣いてしまう。

 初めてした恋、初めての彼氏……先輩のこと、誰よりも好きなのに……っ。

 先輩、私じゃやっぱり釣り合わなかったんですか……?