溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

 良かった……話して、くれた。

 最近は直接言葉を交わす機会もなかったから、こうして話せる事に安心感を覚える。

 先輩は、どうして私をここに呼んだんだろう……。

 安堵したと同時にそんな疑問も浮かんできて、尋ねる為に口を開く。

「先輩、どうして私をここに……?」

 神妙な面持ちをしている先輩に、恐る恐る聞く。

 そうすると先輩は、前置きをするようにこんな言葉を発した。

「今日菜花を呼んだのは、少し話しておきたい事があったからなんだ。」

 ……話しておきたい、事?

 先輩の言葉に、ある可能性が浮かんでくる。

 まさか……ううん、そう思わないほうが良い。決めつけは良くない。

 先輩の口から、ちゃんと聞かないと。

「それって、何ですか……?」

「……単刀直入に、言うね。」

 若干震えた声で返すと、先輩はそう言ってきた。

 そして立て続けに……こう、口にした。

「――俺たち、別れよう。」

 …………え?

 一瞬、言われた事が理解できなかった。

 もしかして……そんな憶測が、現実になる。