運転手さんと後ろの席の間には仕切りがつけられているし、不思議な車。

「出発して。」

 先輩は乗り込んだ後に近くのスピーカーに向かってそう言った。

 そうすると、ゆっくりと車は発進しだした。

 もしかしてこの車、先輩が手配してくれたもの……?

 どういう事なのかはさっぱりだけど、もう帰るのかなって思った。

 で、でも今の時間何時だろう……?

 そう思い、腕時計に視線を落とそうとする。

 ……けど、そうする事は叶わなかった。

「菜花、俺をどこまで溺れさせれば気が済むの?」

「せ、先輩っ……んっ……。」

 どういう事ですか?と聞こうとした口は、先輩の唇によって塞がれてしまった。

 しかも一回のキスじゃなく、何度も何度も降り注ぐ熱いキス。

「せん、ぱいっ……。」

「どうしたの?」

「いき、つづかないっ……。」

 何回もキスをされ、息が上手くできなくなる。

 どうして先輩は、そんな余裕そうにできるんだろうっ……?

 ぎゅうっと先輩の服を握り、頑張って耐える。

 その時、ようやく解放された。