卑怯な事、しちゃった……けど。

 私なりに“好き”を伝えたくて、頑張ってした。

 でも実際、してみると……は、恥ずかしすぎる……っ。

 恥ずかしさから、頬がいつもより何倍も熱い。

 自分からしたキスの感触も忘れられなくて、先輩の顔が直視できない。

「……はぁ。」

 ぐるぐる考える私に、不意に届いたため息。

 も、もしかして、やっちゃダメ、だった……?

 嫌だった、のかな……?

 私のキスは下手で、先輩に好きを届けられなかった……?

 ネガティブな方向にばかり考えて、じわっと視界が滲む。

「菜花さぁ……自分の破壊力、分かってないでしょ?」

 それと同時に聞こえた、何かを我慢しているような声。

「えっ……せ、せんぱっ……!」

 その瞬間に私は先輩に抱き上げられ、夜闇に包まれかけているフラワーガーデンを出た。

 そのままの状態でフラワーガーデン近くに止められていた車に乗り込み、私をシートに座らせた先輩。

 こ、この車って……。

 今私と先輩が乗っている車は、お金持ちさんが持っていそうな黒塗りの車。