菜花の笑顔を見れて、良かった。

 俺はデートをしながら、終始そう思っていた。

 結局、会社は兄さんが継ぐ事になった。

 だから俺はまた自由の身になれて、恋愛事に口を出される心配もなくなった。

 兄さんには申し訳ないけど、こうして菜花とデートに行けているのは紛れもなく兄さんのおかげだ。

 兄さん、本当にありがとう。

 直接言うのは気恥ずかしいから、心の中で呟く。

 ……というか、兄さんのことはいいんだ。

 今日の菜花の格好は、いつにも増して可愛くて、心臓が止まるかと思った。

 ふんわりとしたフリルワンピースに、ハーフアップにしている髪。

 メイクもほんのりしていて、可愛いで頭が埋め尽くされていた。

 事前に菜花から聞いていたカフェに連れて行き、菜花にバレないように見つめる。

「わぁっ、この子可愛いですっ……! ねっ、先輩!」

「うん、可愛い。」

 確かに、ハムスターは可愛い。

 ……でもそれ以上に、菜花が可愛すぎる。

 小動物と戯れる菜花を見て、こっちまで幸せな気持ちになる。