溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

「そんな事でお礼なんて良いのに……菜花は真面目だね。どういたしまして。」

 さっきカフェを出る時、お財布を出そうとしたら先輩に止められたんだ。

 こういうのは男が払うものだって言ってたけど……本当に良かったのかな。

 男の人慣れしてない私からしたら、何が正解なのかなんて分からない。

 でも、先輩がそう言っているのなら……良いの、かな?

 私はそう思う事にして、先輩と再び手を繋いで別の場所へと向かった。



 先輩と次に来たのは、大きな映画館。

 私が好きそうな映画があると先輩に教えられ、わくわくしながら中に入る。

 どんな映画なんだろう……?

 高ぶる気持ちを必死に抑え込んで、ポップコーンと飲み物を買う。

「先輩、今日見る映画ってどんなものなんですか?」

「菜花が好きそうな映画。」

「そ、それはさっき聞きましたよ……!」

 先輩には意図が伝わらなかったのか、そう返されてしまった。

 だ、だけど見たら分かるよね……?

 何の映画を見るのかは全く教えてもらえなかったけど、私はわくわくした気持ちになりながらシートに座った。