溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

「これも食べていいよ。これとそのケーキで悩んでたでしょ？」

「えっ……でも……。」

　その時、先輩がそんな事を言いながら、私のほうにクレープを差し出した。

　確かに、このケーキとクレープで悩んでたけど……。

　先輩は甘いのあんまり好きじゃないのに頼んだのも、もしかして私の為に……？

　素直に受け取る事ができない私に、先輩はふっと微笑む。

「俺は菜花が幸せそうにしてるだけでお腹いっぱいだから。いいよ、食べて。」

「……あ、ありがとうございますっ。」

　私に気を遣わせないような言い回しに、きゅんと胸が高鳴る。

　先輩って何をするのにもスマートだから、本当に凄い。

　またもや尊敬する一面を見て、私は申し訳ないと思いながらも受け取った。

「いただきます！」

　再度両手を合わせて、ケーキと口に運ぶ。

　お、美味しいっ……！

　ぱくっと入れると、瞬時に甘さが口に広がった。

　クリームやケーキ自体の甘さだけでなく、アクセントとなっているオレンジの酸味が加わっている。

　こんなに美味しいケーキ食べたの初めてで、頬が落ちちゃうんじゃないかと心配になった。