溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

 ……だけど、先輩はそんな事しない。

 しない、はずだから。

「お、おかしくないよ。私は先輩のこと、信じてるから……。」

 先輩を、疑いたくない。

 そんな私の気持ちを掬い取ってくれたのか、香耶ちゃんは不安そうに眉の端を下げた。

 でもすぐに少し怒ったような顔で、私の両手を握る。

「何かあったらすぐに言ってね! 篠碕先輩に泣かされたら、あたしが代わりにボコボコにしてくるから!」

 ぼ、ボコボコ……香耶ちゃんならしそうだ……。

 私の手を離し、ぐっと両手に拳を作った香耶ちゃん。

 ……優しいなぁ、香耶ちゃんは。

 私が先輩と付き合う事になった時も応援してくれたし、いろんなアドバイスもしてくれた。

 小さな頃から一緒にいるからお互いの気持ちがよく分かって、香耶ちゃんは私の一番の理解者だ。

 だから……香耶ちゃんに余計な心配を、かけるわけにはいかない。

 確かに香耶ちゃんの言う事は筋が通っていて、私も初めは疑っていた。

 もう私に飽きちゃったんじゃないか、私と付き合うのが嫌になっちゃったんじゃないかって。