溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

 先輩と、お昼っ……!

 私はそれだけでも嬉しくて、声が思わず上ずってしまいそうになる。

 先輩は返事をした私を見て、私の頭を優しく撫でてから教室を出た。

「……びっくりした、篠碕先輩がここに来るなんて。しかも理由がマウント取り。菜花、大丈夫だった?」

「うん、大丈夫だよ。さっきは抱きしめられただけ……だから。」

 そう言った後、私は恥ずかしくなって顔を両手で覆った。

 そっか……さっき、ここで先輩に抱きしめられたんだ……。

 さっきは咄嗟の事で意識してなかったけど、思い返したら恥ずかしいっ……。

 そう思って火照った頬をどうにかしようとしていた、そのタイミングだった。

「藤乃さん、昨日はごめんね。」

 え……?

 頭上から声が聞こえて、慌てて顔を上げる。

 すると、申し訳なさそうに思いつめた表情をしている佑樹君と視線が合った。

 佑樹君は私のじっと見つめ、再度口を開く。

「藤乃さんの言う通り、俺は仮であって本当の彼氏じゃなかった。ただ、藤乃さんの気持ちを応援しようとしたけど……自分の気持ちはやっぱり抑えられなかった。こんな事言っても、言い訳にしか聞こえないと思うけど……。」