溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

「うわ……尊い……。あのカップリングはダメだわ、尊すぎる。」

「待って待って待って……! 最高なんだけど……!」

「悔しいけど……お似合いすぎてなんも言えねぇ!」

 ……何となくだけど、収拾がつかない事態になっているのは察した。

「……モラルもデリカシーもない男は、嫌われますよ。」

「忠告ありがと。でも、君みたいな馬鹿みたいな事はしないから安心しな。」

「……そういうとこ、ですよ。」

 どうなっているのかは分からないけど、先輩と佑樹君の声ははっきりと聞こえる。

 ドスの利いたような、低い声が。

 私も抱きしめられていて、上手に身動きが取れない。

 その時、香耶ちゃんの大きな声が辺りに響いた。

「はいはーい! 二人とも喧嘩しなーい! とりあえず先輩、そろそろ自分の教室に戻らないとダメなんじゃないですか?ホームルームの時間、なっちゃいますよ。」

「……そうだね、そろそろ俺は戻るよ。」

 香耶ちゃんの言葉に返答し、先輩は私を解放してくれた。

 けど同時に、こそっとこう耳打ちをされた。

「またお昼来るからね。」

「はい、分かりましたっ。」