溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

「良かったわぁ~。あのまま市ヶ谷のものになってたら、あたし気が気じゃなかったもん!」

「あたしもそう思う! やっぱり藤乃さんには篠碕先輩だよね~。あんな独占欲ストーカー狂愛野郎のとこに藤乃さんをいさせたくないし!」

「「「それな……!!!」」」

 ……そう言われている事に、気付かないまま。



「菜花~! おはよう!」

「おはよう香耶ちゃん! 今日も元気いっぱいだねっ!」

「もっちろん! 今日も菜花を守る為、元気だよ!」

「えへへっ、ありがとうっ!」

 教室に入るや否や、待っていましたと言わんばかりに香耶ちゃんが抱き着いてきた。

 ぎゅーっと抱き着かれてちょっと苦しいけど、元気を貰える気がする。

 先輩も私に続いて、教室に入ってきた。

 この教室の誰かに、用事があるのかな……?

 呑気にそう考えながら先輩を見つめていると、先輩はある一点を見て動きを止めた。

 先輩、どうしたんだろう……?

 その瞬間、先輩はゆっくりと歩いてある人の目の前に立った。

「君、確か菜花の“仮”彼氏だった子だよね? 昨日ぶり。」