溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

 前に付き合ってた時は、昇降口で別れていた。

 一年と二年じゃ、教室の場所が違う。

 なのに先輩は、一年の教室に行こうとしていた。

 どうしてだろう……と不思議に思い、聞いてみる。

 すると、こんな返答が私の耳に届いた。

「ちょっと、ね。一年の子に用事があるんだ。」

「そ、そうなんですか……?」

「うん、だから今日は一年の教室行くね。」

 用事って、誰だろう……?

 純粋に気になったけど、あんまり深入りはしないほうが良いよね。

 彼女とは言え、先輩のテリトリーにむやみには入りたくない。

 疑問は浮かんだままだけど、私は頷いて先輩と一緒に教室へと向かう。

 外でも感じたけど、視線を向けられてる気がするなぁ……。

 理由は何となく分かってるとはいえ、注目されるのに慣れてないから縮こまる。

 前に先輩と付き合っていた時も視線を集めていたし、やっぱり先輩は人気者なんだな。

 私はそんな自己完結をして、先輩の隣にいられる事を幸せに思いながら歩を進めた。

「ねぇ聞いた? 藤乃さん、篠碕先輩とより戻したんだって!」