溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

 良かった……。

 他の人にどう思われてもあんまり気にしないけど、やっぱり先輩にはそう思われたくない。

 だから、はっきりと告げられた言葉に安心した。

 涙腺が緩みそうになったけど、頑張って我慢して泣かないようにする。

「菜花、学校行こっか。」

「はいっ……!」

 先輩は名残惜しそうに私を離し、代わりに手を差し伸べてきた。

 私はその手を取り、ぎゅっと握り返した。



 校内に入って、教室に向かう。

 やっぱりというか、視線はたくさん集めた。

 私と先輩が別れた事、佑樹君と付き合っていた事は周知の事実のはずだから、無理もないと思う。

 でも……誤解されたまま、過ごしたくはないかな。

 佑樹君に正式に仮交際をやめようと言ったわけじゃないし、佑樹君とは気まずいままだから。

 ちゃんと、言わないと……。

 佑樹君はちょっと怖かったけど、私を手伝ってくれた事に変わりはない。

「せ、先輩?」

「ん?」

「教室、行かないんですか……?」

 その時、ある違和感に気付いて先輩に声をかける。