溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

 確かに、佑樹君は仮だったけど……。

 それでも、付き合っていた事実は変わらないから……そう思われても、仕方ないはず。

 大人しくこくんと頷くと、先輩は私の頭を優しく撫でてくれた。

「だったら誰も菜花のことを軽い女だって言わない。そんな奴がいたら、俺が潰してあげるから。」

 つ、潰す……。

 物騒な言葉が聞こえた気がするけど、きっと突っ込んじゃいけないよね……。

 でも先輩にはっきりとそう言われて、ほっと安堵の息を吐けた。

 けどその瞬間、先輩が私を引っ張った。

 えっ……!?

 そのまま先輩の胸板にダイブする形になって、抱きしめられる。

 こ、ここ外ですよ……!?

 そう言いたかったけど、先輩が私の耳元でこう言ってきた。

「俺は絶対にそんな事思わないから、安心して。菜花が他の誰と付き合っていただろうが、今俺の隣にいてくれるだけで幸せだから。」

 囁かれるように告げられ、間髪入れずに私の頬にキスを落とす先輩。

 突然キスされたら、いつもは恥ずかしくてどうにかなるけど……今は恥ずかしいよりも安堵と嬉しいという気持ちのほうが大きかった。