溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

 隠しきれないような想いを秘めながら、先輩と一緒に通学する。

 でもその時、ふっとある事を思ってしまった。

 私……仮とはいえ、昨日まで佑樹君と付き合ってたよね。

 もしかしたら、軽い女だって思われてるかもしれない。

 ……もしかしたら、じゃないかもしれないけど。

 考えだすと止まらなくて、つい立ち止まってしまった。

「菜花?」

 私が立ち止まった事を不思議に思った先輩が、振り向いて優しい声で尋ねてくる。

 そのせいで私は思わず、思っていた事を口にしてしまった。

「私、昨日まで仮だったとはいえ佑樹君と付き合ってて……軽い女だって思われるかもしれないって、思って……。」

 言いたい事がまとまらず、もごもごと口を動かす。

 何て言い表せばいいのか、分からない……。

 その間にも、不安はどうしても膨らんでいってしまう。

 ちゃんと分かるように、はっきり言わないと……。

「そんなわけない。あの男の子とは仮の付き合いだったんでしょ?」

 何か言わないとと思って口を開いたと同時に、先輩がそう聞いてきた。