は、恥ずかしかったけど……それ以上に、嬉しかった。

 先輩に触れられた事実が嬉しくて幸せで、悲しくもないのに泣いてしまいそうになる。

 私って、結構泣き虫だ……。

 でも今の私はそんな気持ちも吹き飛ばすくらい、幸せな気持ちに包まれていた。



 制服の裾を整えて、姿見の前で確認をする。

 変なところがないように念入りに確認してから、スクールバッグを片手に持って玄関を出た。

「いってきます!」

 大きな声で家の中に響き渡らせると、お母さんがキッチンから顔を出して返してくれた。

「いってらっしゃい。気を付けてね。」

「うん!」

 お母さんに元気のいい返事をして、道路に出る。

 その時、大好きな人の声が聞こえた。

「おはよう、菜花。」

「おはようございます、先輩!」

 声のしたほうに視線を向けて、笑顔で挨拶する。

 いつもと同じくかっこいい庵先輩が視界に映り、それだけで胸がポカポカした気持ちになった。

 こうして挨拶を交わすのも、随分久しぶりだ……。

 心の底ではそう思うもやっぱり、先輩に会えて嬉しい、話せて嬉しいと考える。