……わっ、かっこいい人……。

　振り返ってくれた庵先輩は私の手の中にあるハンカチを見ると、慌てたように微笑んだ。

「拾ってくれてありがとう。」

「あ、いえ……。」

　爽やかな微笑みでそう言い、ハンカチを受け取ってくれた庵先輩。

　最初のきっかけはそれだったけど、その日以降庵先輩と関わる機会があったんだ。

　一年生の為に開かれた校内案内で二年とペアになる事があって、そこでペアを組んだのが庵先輩だった。

「この前のハンカチ拾ってくれた子だ。今日はよろしくね。」

　この前と変わらない優しい笑みで、先輩は校内を丁寧に案内してくれる。

　元々人とあんまり関わるのが苦手だったから、庵先輩みたいな人とペアになってすっごく安心したのを覚えている。

　その時に先輩と趣味の話や好きなものの話などを交わしていき、関わる機会も一段と増えた。

　廊下ですれ違いざまに挨拶してくれるし、お昼も都合が会えば一緒に食べる事もあった。

　先輩は関わっていくほど、優しくて慈悲深い人だと伝わってくる。