先輩と別れた後、家の中に入って一直線に自分の部屋へと向かう。

 そして私は、ある人に電話をかけた。

「もしもし。」

《珍しい、菜花が自分からかけてくるなんて。》

「そ、そうかな……?」

 電話越しに聞こえてきたのは、香耶ちゃんの声。

 香耶ちゃんには今回の件でお世話になりすぎたから、話しておかないといけないと思ったんだ。

《で、どうしたの?》

「実はね――」

 私は香耶ちゃんの声に反応し、事の顛末を話し始めた。



「先輩と、また付き合う事ができたんだ。」

 市ヶ谷君との事、さっきの先輩との事を話し終える。

 すると間髪入れずに、香耶ちゃんが声を上げた。

 電話越しでもわかるほどの、大声で。

《そうなの!? 良かったじゃん、菜花!》

「ふふっ、うんっ!」

 まるで自分のことのように喜んでくれる香耶ちゃんに、思わず微笑んでしまう。

 今回一番迷惑をかけたのは、間違いなく香耶ちゃんだ。

 それなのに、こう言ってくれる事が嬉しかった。

《にしても、市ヶ谷には制裁を加えないと気が済まない! 菜花に手出したとか……締める相手を市ヶ谷に変更しようっと。菜花助けてくれたし、菜花が幸せそうだから篠碕先輩には目を瞑る!》