いくら元々兄さんが継ぐ予定だったからって、俺に変わった今そう言わなくても良かったはず。

 なのに、どうして……?

 疑問に思いながら投げると、兄さんは困ったような呆れたような息を吐いた。

「分かってないなぁ、庵は。可愛い弟の為だからに決まってるよ。弟の恋すら応援できなくて、何が兄だって言うの。それに元々は僕の役目なんだから、弟に任せるわけにはいかない。」

「兄さん、お人好しにもほどがあるよ。」

「それほどでも~。」

「褒めてないよ。」

 やっぱり……よく分からない、兄さん。

 でも、俺の自慢の兄さんだ。

「父さんには僕から話をつけておくよ。どうせあの様子じゃ、今日は会社に泊まるだろうし。庵は何も、気にしなくてもいいよ。」

「……ありがと、兄さん。」

「あ! ツンデレ庵のデレの部分発動した!」

「ツンデレじゃないしデレてもない。」

「庵、辛辣~……。」

 こんなやり取りも、ここ最近してなかったからか新鮮に思える。

 本当、兄さんには頭が上がらないや。今度兄さん行きつけのお店の和菓子、たくさん買っといてあげようかな。