溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

 そう言いながら、兄さんは「よっこらせ。」と体を起こす。

 確かに……そうだ。

 俺の交際は許してないのに、兄さんの交際は許している。

 今までそこに気が回らなかったけど、改めて考えれば卑怯な気がする。

 まぁ、きっと兄さんの成績のほうが良いからだと思うけど。

 一人で考えている間にも、兄さんはまた話し始める。

「急に会社を継げって言われて、好きな人と会うなって言われて……反抗しないやつがどこにいると思ってるの? 父さんはもう少し……ううん、大分人間性を磨いたほうが良いと思うよ。」

 意味深な笑みで父さんを見つめながら、嘲笑うように言った兄さん。

 そのせいなのか、父さんは反論できず唇を噛み締めている。

 兄さん……いつもはドジで頼りない、兄らしくない存在だと思っていた。

 だけど、そんな事ないや。

 ……兄さんは、俺よりも随分優れている。

 けど今度は打って変わって、何でもない事のようにさらっとこう口にした。

「あ、会社の事についてだけど……庵は継がなくていいよ。僕の怪我ももう治るし、跡を継ぎたければ継げばいいけど……嫌なら降りちゃっていいから。」