その時、菜花にぎゅっと抱き着かれた。

「もちろん、ですっ……!」

 ……本当?

 菜花にこれでもかと強い力で抱き着かれて、心拍数が急激に上がる。

 同時に思わず疑ってしまうような、都合が良すぎる言葉も聞こえてきた。

 だけどきっと、菜花のこの言葉は嘘じゃない。

 菜花は嘘を吐かないし、何より……。

「うぅっ、せんぱいっ……っ。」

「もう……泣かないで。本当可愛いなぁ。」

「だ、って……っ。うれしく、って……。」

 肩を震わせて泣いている菜花を、俺のほうから再び抱きしめる。

 あー……こんな幸せ、もう味わえないと思ってた。

 菜花と付き合った日から……ううん、菜花に出会った日から俺の人生は変わった。

 こんなに優しくて可愛くて愛らしくて誰よりも天使な菜花を、一瞬でも手放した自分を殴りたい。

 過去を悔やんだって、過去は変わらない。

 でも……こうして菜花に再び触れる事ができて、本当に良かった。

 涙を止めようと自分で拭っている菜花にまた愛おしさが込みあがり、優しく包むように菜花の顔を両手で持ち上げる。