先輩に連れられてきたのは、初めて来た先輩のお家。

 先輩の家は普通の家よりも大きくて、つい辺りをきょろきょろと見てしまった。

 ……って、あんまり見すぎるのは失礼だよね。

 はっと我に返って視線を落とし、先輩に手を引かれて部屋に連れていかれる。

「ちょっと待ってて。」

 私をソファに座らせた先輩は、一旦部屋を出て行った後にマグカップを手に持って戻って来た。

 あ……私の大好きな、ココアだ……。

 ちらっと見てみると甘い匂いが漂ってきて、思わず気が緩みそうになる。

 でも、私はここにいちゃいけない。

 だけどそれ以上に……さっきの佑樹君の視線が、頭から離れてくれない。

 なん、だったんだろう……さっきの、佑樹君……。

 あんな狂気的な顔をしていたのも、強引に迫ってきたのも……怖かった。

 本当に、先輩が来てくれて良かった……っ。

「安心して。ここには俺しかいないから、大丈夫。」

 さっきの出来事を思い出して怯えていると、先輩が優しく引き寄せてくれた。

 あったかい……先輩に抱きしめてもらうの、やっぱり好き。