溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

 扉を開け、菜花の目の前にココアを置く。

 でも、菜花は動こうとしない。

 ぎゅっと力強く両手を握りしめていて、視線を落としている。

 さっきの男にされた事がよっぽど怖かったのか、まだ少し震えている。

 ……これはココアだけじゃ、安心させれないかもしれない。

 そう思い俺は菜花の傍に行って、菜花を自分のほうへと引き寄せた。

 ぎゅっと優しく、でも強い力で抱きしめて菜花に伝える。

「安心して。ここには俺しかいないから、大丈夫。」

 少しでも安心してもらおうと、俺なりに言葉をかける。

 ……だけど菜花は、それを拒否するように俺の胸板を押した。

「離して、ください……。」

 小さな声で紡がれた言葉に、俺は一瞬だけ驚く。

 けど今まで自分がしてきた行いを考えると、拒否されるのも仕方ない。

 本当ならここで離れてやりたいところだけど……もう無理。

 もう、菜花と離れたくない。

「嫌。離さない。」

「……っ、お願い、です……離してください……。」

 俺を拒むように、一生懸命に首を左右に振る菜花。