溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

 そう思いながらも、ホームに入って来た電車に乗る。

 俺の後から美幸さんも乗ってきて、二人で病院へと向かう。

 その間も俺は、ずっとスマホを眺めていた。



「今日は美幸も一緒なんだ~。どこかでばったり会ったの?」

「そうだよ~。というかどうなの? 体調大丈夫?」

「大丈夫大丈夫。大分快方に行ってるらしいし。」

 病室で和やかな会話をする二人の姿を眺めながら、俺も持ってきたものを兄さんに渡す。

「兄さん、これお見舞い。前この煎餅食べたいって言ってたよね?」

「流石我が弟~! 兄ちゃんの好みを分かってくれてる~!」

 俺が袋を渡すと、兄さんは子供のように喜びながら貰ってくれた。

 その後俺はこれ以上二人の邪魔にならないように、今日のところはもう帰ろうと踵を返す。

「じゃあね、兄さん。また今度暇な時に来るから。」

「あっ、ちょっと待ってよ!」

 言葉を残し、病室から出ようとした時だった。

 くいっと制服の袖を兄さんに引っ張られ、足を止める。

 何だろう……と、少し面倒になりながらも兄さんの言葉に耳を傾ける。