溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

 佑樹君の視線に、思わず戦慄してしまう。

 鋭くて怖くて、黒い愛が込められている視線。

 そのままぎゅっと、佑樹君のほうに引き寄せられる。

 強くて苦しくて……嫌だと思ってしまう。

「や、めてよ……ひろき、くん……っ!」

「どうして? 俺は菜花の彼氏だよ? これくらいしても、良いでしょ?」

「ち、がう……。」

「え?」

 佑樹君は仮でも恋人だから、拒否するのは失礼。

 協力してもらっているんだから、尚更ダメ。

 でもやっぱり……嫌だった。

 ――庵先輩以外の男の人に、触れられるのは。

「佑樹君は仮であって、本当の彼氏じゃ……ないっ。」

「ふーん、そっか。」

 自分の気持ちを伝えて、解放してもらおうとする。

 すると佑樹君は、何かを納得したように声を洩らした。

 そして、抱きしめていた腕を解いた。

 良かった……これで、解放してもらえる……。

 体が自由になり、ほっと安堵の息を吐く。

 ……だけど、そう簡単にはいかなかった。

「――だったら、本当の彼氏になればいいよね。」