溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

 だけど、佑樹君の有無も言わさず雰囲気に呑まれ、何も言えなかった。



 あの後は何も起こらず、佑樹君もいつも通りに戻った。

 スマホも返してもらい、とりあえず一安心する。

 でも、お昼の時の佑樹君……変だった。

 黒いオーラを纏っている感じがして、肯定も否定もできなかった。

 ぼんやりとそんな事を考えていると、いつの間にか放課後になっていた。

「菜花、帰ろうか。」

「う、ん……。」

 佑樹君は仮恋人だから、こうやって関わるのは避けられない。

 恐怖心は少なからずあり、警戒心もいつもよりも高い。

 何も起こらない事を願いながら私は、佑樹君と一緒に帰路についた。



 会話もいつもより少なく、静かに帰宅する。

 隣には、いつもと同じ雰囲気の佑樹君。

 今日はちょっと、佑樹君と一緒にいたくないな……。

 さっきまでは我慢できたけど、やっぱりいたたまれなさすぎる。

「あの、佑樹君――」

 ――プルルルッ

 大きな声で気持ちを紛らわせ、佑樹君に言おうとした途端。