溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

「ねぇ、藤乃さんと市ヶ谷君って付き合ってるの?」

「何か雰囲気それっぽいよね……市ヶ谷がオーラ出しまくってるっていうか。」

「藤乃さん、篠碕先輩と別れたからじゃない?」

 な、何だか凄く言われてる気がするっ……。

 ここからじゃあまり聞こえないけど、良からぬ事を言われているに違いない。

 うん、絶対そうだ。

 ……そんな思い込みをしていると、不意に声をかけられた。

「菜花、どうしたの? そんな百面相して。」

「……っ、な、何でもないよっ!」

 佑樹君の質問が聞こえ、慌てて取り繕う。

 やっぱりまだ……佑樹君と仮恋人になっている事が実感できない。

 佑樹君はごく普通に私に“恋人”らしく接しているけど、私は佑樹君のこと“友達”としてしか接する事ができない。

 名前呼びだって、佑樹君と友達としての距離が縮まったとしか思えない。

 こんな事思うなんて、佑樹君に失礼なのに……。

 そう思っていても、気付けば同じような事ばかり考えてしまっている。

 ……この調子で先輩を忘れる事なんて、できるのかな。