溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

 もしかしたら、先輩に軽い女だって思われるかも……。

 ……ううん、余計な事考えないほうが良い。

 もう、決めたんだから。

「わ、かった。じゃあ……仮だけど、お願いします。」

「良かった。俺からもよろしくね、藤乃さん。」

 市ヶ谷君と付き合う気はないから、仮になっちゃうけど……。

 市ヶ谷君を利用しているようで、罪悪感が募る。

 ……市ヶ谷君は、良いんだろうか。

 私とちっぽけな悩みに、付き合って……。

 良いって言ってくれたけど、やっぱり心配になる。

「あ、仮の恋人だけど周りには本当の恋人のように見せたほうが良いと思うからさ……名前呼び、しない?」

「名前……?」

 市ヶ谷君が不意にそう口にし、私も反芻する。

 た、確かに……周りには恋人同士だって見られていないと意味がない。

 この行動は、もう先輩に執着しないって気持ちを表す為にもするんだから。

 私の言葉を聞いて、市ヶ谷君は大きく頷いた。

「そう。恋人同士なのに苗字呼びも変でしょ? 篠碕先輩に分かりやすく諦めるっていう気持ちを伝えるのなら、こうやって徹底したほうが良いと思うんだよね。」