溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

 い、言っちゃったっ……。

 口にすぐ出す癖を直さなきゃなぁ……そう思っていても、早々には直りそうにない。

 私が言葉を言った途端、ぐいっと先輩に抱き寄せられた。

「本当に……どれだけ可愛い事言えば気が済むの? 本当可愛すぎる。」

 そ、そうなのかな……。

 先輩はよく可愛いと言ってくれるけど、私には可愛さなんてない。

 でもやっぱり、彼氏からそう言われると……嬉しくなる。

 もっと可愛くなって、ずっと好きでいてもらえるように頑張ろうって思えるから。

 私もそっと先輩を抱き返し、幸せに浸る。

 ……もっと、一緒にいたいなぁ。

 先輩の腕の中で、私はそう考えていた。



 ――キーンコーンカーンコーン

 んー……終わったぁ……。

 辺りにチャイムが鳴り響き、帰る準備をする。

 スクールバッグの中に必要なものを入れ、片手に持つ。

 その時、教室の外から私を呼ぶ声が聞こえた。

「菜花、帰ろう。」

「はいっ!」

 先輩だっ……!

 庵先輩はいつもこうして、私を呼びにわざわざ一年の教室まで来てくれる。