溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

「そ、そんな軽いノリで……。」

 付き合うって、そう簡単に決めちゃダメだと思う。

 市ヶ谷君に申し訳なくて、視線を下げてしまう。

 だけどそれを、市ヶ谷君に阻止された。

 市ヶ谷君にぎゅっと力強く手を握られて、驚いて視線を向ける。

 そのせいでパチッと、市ヶ谷君と視線が合う。

「俺は藤乃さんが望む事なら何でもするつもり。だから仮でもふりでも、俺は全然気にしないから。藤乃さんの役に立たせて、お願い?」

 うっ……そ、そんな瞳で見ないでっ……。

 うるうるとした瞳でじっと見つめられ、言葉に詰まってしまう。

 ……その時、脳裏にこう浮かんだ。

 私と市ヶ谷君が付き合っているって事にすれば、先輩も自分の恋に打ち込める。

 多分、私のことなんか気にしていないだろうけど……先輩の重荷にならずに済むかもしれない。

 先輩の幸せを願うならきっと……そうしたほうが良いんだ。

 仮で付き合うだなんて、罪悪感と申し訳なさで心が侵食されそう。

 でもここまで市ヶ谷君が言ってくれているんだから、頼らせてもらっても……いいかな。