「そ、それは、ど、どういう事で……? か、仮って、え……っと……」

「あはは、藤乃さんテンパりすぎ。」

 ううっ……だって、市ヶ谷君が変な事言うから……。

 そういえば、この前もそんな事言ってたよね……?

 あたふたと慌てて言葉を発し、頭の中のはてなマークを整理しようとする。

 けど全然意味をなさなくて、逆に疑問だけが増えた。

 むっ……市ヶ谷君が先に言い出したのに。

 ぷくーっと頬を膨らませて怒ってるアピールをするけど、市ヶ谷君には効いていない。

 それどころか、市ヶ谷君は意味深な笑みを浮かべた。

「藤乃さんは篠碕先輩を忘れたいんでしょ? だったら、俺と仮で付き合ってみてほしい。失恋には新しい恋が効くって、八千代が言ってたのを聞いたからさ……もしかしたら、先輩のこと忘れられるんじゃないかって思って。」

 い、一理ある……。

 確かに、市ヶ谷君が言ってる事はきちんと筋が通っている。

 妙に納得してしまったし、私も淡い期待を抱いてしまう。

 でもやっぱり、そういうのは良くないんじゃないかな……。

「仮にそうしたとしても、市ヶ谷君に申し訳なさすぎるよ。私は市ヶ谷君のこと、友達としてしか見られないもん。」