溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

 ぼんやりと、昔の出来事を思い出す。

 ――プルルルッ

 うーんと唸っていたその時、突然スマホが鳴りだした。

「!?」

 だ、誰から……?

 疑問が脳裏に浮かび、恐る恐るスマホを取り出して確認してみる。

 ……どうしよう。

 スマホの画面には、“ある人”の名前が映っていた。

 でも今、私が出ても良いのか分からない。

 私にはもう、関係のない人だから……。

 そう思って拒否を押そうとしたけど、一旦踏みとどまる。

 この人にはちゃんと、言っておいたほうが良いよね……。

 ……私が、庵先輩を諦めた事。

 考え直して私は、拒否から指を離して応答を押した。

《良かった~出てくれた~。久しぶりだね、なのちゃん。》

「はい、お久しぶりです。識さん。」

 私に電話をかけてきたのは、庵先輩のお兄さんの(しき)さん。

 識さんは私よりも二つ上で、私と先輩とは違う高校に通っている高校三年生。

 私は識さんと何度か会った事があったから、その時に連絡先を交換していた。

 あんまり連絡したりはしないから、識さんの連絡先が入ってた事すっかり忘れてたけど……。