溺愛したい彼氏は別れても、溺愛をやめたくない。

「菜花、おいで。」

 私が来たのは、日が適度に当たる裏庭。

 綺麗にガーデニングされたお花がたくさんあって、ベンチなどもあり整備されている。

 私より先に来ていた庵先輩が手招きしてくれ、急いで向かう。

「遅れちゃってごめんなさいっ!」

「ううん、全然大丈夫だよ。ご飯、食べようか。」

「はいっ!」

 先輩の言葉に大きく頷き、お弁当箱を開く。

 いつも私たちはこうして、ここで昼食を取って他愛のない話をする。

 今朝あった事、学校の事、勉強の事……いろいろな話をしていく。

 この時間が私は一番好きで、いつまでも続けばいいなと思ってしまう。

 そんな事絶対にないけど、先輩とたくさんの時間を共有したい。

 先輩も、そう思ってくれてるといいな……。

「菜花、考え事してる?」

「か、考え事……そういうわけじゃ、ないんですけど……」

 おもむろに尋ねられ、言葉を選びながら自分なりに答える。

「先輩ともっと……一緒にいられたらいいなって、考えてました。」

 思っている事をそのまま口に出してから、恥ずかしさで両手で顔を覆う。